3.島田さんのこと。

「つまり、共感覚があるってこと?

それと、思い切って聞くけど、虐待を受けてたってこと?


答えたくないならいいよ。と島田さんは付け加えた。


「そうだね。そうみたい。」


あっちゃんはよく、こんな風にまとめて答える。

慣れた人は、それで全てを分かってくれる。

島田さんもその1人だ。

あっちゃんの恋人でもある。


2人は7月の熱い午後、部屋の中で汗ばみながら冷たいビールを飲んでいる。

息子のシマくんは保育園に行っている。

夕方までの時間で、あっちゃんは自分のことを島田さんに打ち明けようとしているのだ。


キッカケは、プロポーズだった。

あっちゃんもお受けするつもりだ。


そりゃあ、息子の名前が島田シマになってしまうのは心配だ。ネタにして生きていけとしか言えない。


けれど、あっちゃんはもうずいぶん長く頑張ってきた。

島田さんも、一年もたっていないけど2人をそっと見守って、楽しくやってきた。


もういいだろうと言うことで、この2人は結婚をしようとしている。


ホッとしたのだろうか。

あっちゃんは、誰にも話したことがないこれまでの人生を、今話してみようという気になった。


この話を聞いても、大切にしてくれる人や、面白がってくれる人となら、うまくやっていけるかもしれない。


そんな気持ちもありながら、あっちゃんは話す。


2本目のビールを開けながら。