6.チャーミング
「お母さんねぇ。俺はそんな悪い人に思えないんだけどな。」
島田さんは言う。
「かなり変わってるとは思う。だってさ、俺がお呼ばれした時ずっと言ってたもん。
いつもはもっとちゃんとしたご飯作るんですよ〜とか、いつもはもっと家もキレイなんですよ〜とか。
じゅうぶんご馳走だし、家もピカピカだったのにね。」
あっちゃんは言う。
「全力でおもてなしといて、あるものでチャチャっと作っただけだからごめんね〜とか言うの、あの人は。見栄っ張り。」
「それがさ、チャーミングだよね。」
島田さんはいい人だ。
あっちゃんは心から思う。あの母を、チャーミングで済ませてしまえるなんて。
「私はこれが最大のおもてなしだけどね。」
ビール缶をテーブルにドンと置いてぶっきらぼうに言うと
「俺、クリアアサヒ好きよ。安いし。あとあっちゃんの料理はめちゃめちゃおいしい。」
そう言って、両手を広げる。
あぐらをかいた膝の上に座りながら、あっちゃんは思う。
島田さんの腕はどうしてこんなにしっくりくるんだろう。
かすかな匂いは、どうしてこんなに優しい色をしているんだろう。
もう話さなくてもいいかな。
と思った時
「で?
もっと聞かせて。あっちゃんの武勇伝。」
と言われて吹き出してしまった。
武勇伝か。
うん。
なんかいいな。