どうして話したいの?

焼き鳥屋の個室で向かい合って、また話そうとするあっちゃんに、

島田さんは聞いた。


なんだろうね。たまには、私がたくさん喋りたいのかな。

聞いてくれるだけでいいよ。

何かしてほしいわけじゃないよ。

ただ聞いて、知ってほしいだけかな。


島田さんは、頷く。


確かにさ、重たいっちゃ重たい話だから、何かしてあげたくはなる。

気の利いたことがいいたくなるよ。

でもあっちゃん、そういうのはいらないんだね?

俺は聞いてればいいのか。あっちゃん劇場を。



うん。

話したいだけ。聞いてほしいだけ。

それでもいい?



もちろん。



島田さんは思っていた。


今まで誰にも話さずにきたものを、口に出したら

あっちゃんは何か変わるんだろうか。

心が軽くなるんだろうか。

それにしても、聞き手に選んでくれたんだなぁ。

こんな俺をなぁ。

出会うもんなんだね。うん。

なんでも話してくださいよ。ただ聞いてるからさ。

俺がみてるのは現在のきみだけ。

なにを聞いても、ちょっと同情するくらいのもんだ。



あっちゃんはビールを一口飲み、また話し出す。