あっちゃんの観察。

島田さんと、シマくんは

台所に立つあっちゃんを見ている。


何か作ろうとしているあっちゃんは、豚肉のパックを見つめている。


次の瞬間、新鮮なそれをゴミ箱に落とした。


あっ。という島田さんと

ニコニコしているシマくん。


2人に気づいたあっちゃんは、バツが悪そうに笑う。


なんかね、そうしたかったの。


そっかそっか。と、島田さんは言う。

白菜をリズミカルに切り始めたあっちゃんの横顔を眺める。


シマくんの方を見ると、おかしくてたまらない、という顔で笑っている。


あのさ、ママはこれでいいんだよ。これが大事なんだって。


と言う。


後から聞いたら


だって私、ずっと自分のしたいこと無視してきたからね。

生々しい話だと

顎が外れそうに痛くたって、あそこが擦り切れて痛くたって、口の中が気持ち悪くたって、全部全部無視して、毎日仕事してたわけよ。

私の中の私が、例え嫌だって言っても、全然聞いてやらなかったわけよ。


よく考えたら、どうしても働かなきゃならなかった訳でもないのにさ、嫌なことばっかりしてさ、トラウマみたいなものたくさん作ってさ


ある時から、アホらしくなったんだよ。

だから、衝動的でも、頭がおかしく見えてもね、私はその時体が動くように動くの。もう止めないんだ。

岩清水豚は、今日は食べなくていいんだ。



と、言っていた。


なるほど。と思った。


俺は、自分のしたいことに任せて、どんなことでもしているだろうか。


そう思うと、あっちゃんの方がよっぽど逞しいな。

そう気がつく島田さんだった。