ホームレスと、筆談と。

東京にいた最後の半年間は、ホームレスだった。


親と一切の連絡を絶ち、フラフラしていた。

その間、いろんな人と知り合った。

遊んだり、恋をしたり、お金を稼いだり


今思い出しても、あの頃の私は生きていた。

もう一生親のもとには帰らないと思っていた。


けれどある朝、私は捕まる。

強制的に地元に帰る。


そこからは、ただただ地獄だった。


声が出なくなった。

筆談するようになった。

病院に通うようになった。


親がいくら思ってくれても、決定的にすれ違っていた心が交わることはなく


私は何もできない人形のようになっていった。


小さい頃から、私の声は遮られ、いつも人の言うことを聞いていたと思う。


自分で選べない。嘘をつかないとうまくやれない。はしゃいではいけない。逆らってはいけない。


幸せになってはいけない。


そんな風に、親は私に期待していると思っていた。


だから、親が望んでいるといっても、決して私は親の前で幸せになるわけにはいかなかった。


不幸そうな私でいないと、家に居場所はないと思っていた。


でも、覚えている。何年後かのお正月、たどたどしくも


あけましておめでとう。


が言えた時、父も母も兄も、泣いて喜んだことを。


そんな風に、たまに心が通い合う瞬間を持ちながら、上辺だけの家族をずっとずっと、私たちは続けている。