眠れない夜。

私が夜更かしをする時は、怖がっている時だ。
悪夢を見そうで、怖がっている時。

目を閉じると身体が固まって、息が浅くなる。
シマくんを起こさないように寝返りをうつ。
寝るもんか。そっちの世界に引き込まれてたまるもんか。

そっちの世界がなんなのか、私はまだ知らない。

私が置いてきたもの
私が見ないようにしてきたもの
私が封印したもの

捨てたものたちの世界?
わかっている。
そこに行かずに、安心して生きることはできないこと。

だから私には手があるんだ。
右手はシマくんと
左手は優しいあの人と
つないで、目を開く。

そっちの世界は、きっと恐ろしいものではないこと。
もう私は気づき始めている。

ただね、ただ、とっても勇気がいることだから
私は私を急かさないようにしているんだ。

怖い夜には、お酒を飲んで夜更かししてもいいと思っているんだ。

夢のふちで、私はとても静かな気持ちでいる。
そっちの世界が、私に言う。

こちらもチャレンジしているんだよ。あなたの覚悟が決まったか、たまに訪ねているだけ。
怖がらせてごめんなさい。
ゆっくりでいいんだからね。いつか会いに来てね。あなたもそれを望んでいるよ。可愛いあっちゃん。
私たちはあなたを愛しています。


いつの間にか寝てしまって目覚める朝、
いつも私はあたたかな気持ちでいる。

だから知っているんだ。
見ないようにしているものが、本当は優しいこと。