8.シマくんの気持ち。

結局、話し終える前にお迎えの時間になってしまった。


あっちゃんは保育園に小走りで向かう。

門をあけると、誰かお友達の声がした。


シマくんのママきたよ〜!


その子はいつも門の方を見ているんだろう。

シマくんのママ〜と話しかけてくるのに手を振る。


保育園を出て、2人で歩きながら話す。


「今日ね、お兄ちゃんいるよ。」

「ええっ!やったー!」

角を曲がった公園で、島田さんは待っている。


「おっ!きたな!おかえり」

と笑う彼に、シマくんが走り寄っていく。


「今日はお外でご飯だよ。」

と言うと、シマくんの顔がぱぁっと明るくなる。


「やったぁぁぁ!ラーメンだー!」

と叫んだので、ラーメン屋に行くことにした。


3人で歩く。影が伸びる。


昨日の夜。シマくんと洗濯物を畳んでいる時だ。


「ママ、もう寂しくない?」

と目を丸くして、そう聞いたシマくんを、あっちゃんは静かに見つめた。

「ママは寂しくないよ。シマくんは?」

「シマくんは、パパに会いたい。」


思った通りの答えに、あっちゃんの胸はキュッとなる。


「そうだね。会いたいね。」

と答えると

「パパなつかしいねぇ」と笑った。


そして、少したってから言った。

「ママ、お兄ちゃんまた遊びにくるからね。待ってようね。」


あっちゃんは大きな決意を持って、シマくんのパパと離婚をした。

今は会うこともなくなったけど、もう少したったらシマくんに住所を教えてもいいと思っている。


まだそこに住んでいればの話だけど。


そんな2人にとって、突然現れた島田さんという人は、ホッとする存在なのだ。


シマくんはたまに言う。

「お兄ちゃんがいるから大丈夫だよ。寂しくないよ。」


それからこう続ける。

「シマくんがママを守ってあげるからね。」


あっちゃんには、守ってくれる男性が2人いる。

なんて心強いんだろう。