4.いつか王子様が迎えにきてくれる。
男運は、お世辞にもいいとは言えない。
海辺の田舎町で育った。
スナックが立ち並ぶ商店街には昼間から酔っ払いがうろつき、
私は通学路で、放課後の小径で、何度も露出狂にあった。
父にも兄にも、なぜだか胸やお尻を触られる毎日だった。
別に色っぽい子どもだったわけではない。日焼けしたどこにでもいる子だ。そして特別大人しく、特別頭が良かった。
中学生になり、初めての恋人ができていつも一緒にいるようになった。
恋って楽しい。
そのまま、初めて男の人に抱かれてみた。
終わってみると呆気なく、大人のキスは気持ち悪く、私はこれでこの人とずっと一緒にいなければいけないんだろうか。。と気が重くなっていた。
そんな気持ちを隠したまま付き合っていたある日、廊下で女の子と話している彼を見かけた。
キョロキョロと周りを気にしたかと思うと、2人はさっとキスをした。
目撃したのは私だけだったと思う。
目をそらさずにいると、彼と目が合った。すぐにそらされた。
そのまま、別れ話もなく終わった恋だった。
それからも私の男運はよろしくないことが続く。
そのうちに、はたと気づく。
私は男の人に
うんうんと黙って話を聞いてほしいだけで
優しく抱きしめてほしいだけで
ただ好きでいてほしいだけだった。
セックスなんか最初はいらなかったのだ。
お母さんの代わりに優しくわかってほしいだけだったのだと。
お母さん。
そう呼ばなくなったのは、いつからだろう。
今は、「あんた」と呼んでいる。